だって しょうがないじゃない
                 〜789女子高生シリーズ・枝番

          *YUN様砂幻様のところで連載されておいでの
           789女子高生設定をお借りしました。
 

清々しい青空が、
その透明度を増してか、日に日に高くなってゆき。
朝晩の冷え込みといい、
ああもうすっかり秋ですよねぇなんて、
ご挨拶の延長に、
ついつい口を突いて出るよになった今日このごろ。
陽射しはまだまだ強いほうながら、
梢を揺らし、木陰を吹き抜けてゆく風の涼しさは格別であり。
澄んだ空へと響くホイッスルの音が、一際 冴えて鳴り響けば、

 「あああ、もう2週間を切っちゃいましたね、体育祭。」

やだなあと肩を落としまでして吐息をつくその所作に、
手入れのいい さらさらの赤毛が、ふさんと肩先で揺れる。
その陰へ隠れてしまったやわらかな頬を、
すぐの真横から指先でつつんとつつくのは、
ビスクドールを思わせる、白磁の頬した金髪の美少女で。
くせっ毛なのか、軽やかなボリュームを裾になるほど見せるその髪は、
前髪にけぶるような印象を生み、
その下になっている真っ赤な双眸の存在を、
ベールをかけるよにして柔らかなそれへとする効果も醸しており。

 “まあ、久蔵殿は 仲間うちには、
  それほど苛烈な気性じゃあありませんしね。”

言葉足らずなところがむしろ、稚くって可愛らしいと。
ちょっぴり下がった目尻が甘い、
はんなりした笑顔でそんな彼女らを見やっておいでの、
こちらもまた鮮やかな金の髪した、碧眼の少女の方へと、
窓辺にいた二人のお仲間が揃ってくるりと振り返る。
他の生徒の姿はない教室は がらんとしていてひたすら静かで。
時折カーテンがはためく音が たぱたぱと窓辺で鳴っている。
衣替えまであと数日の、
襟は濃紺、胸元が白という夏仕様のセーラー服は、
窓からの陽を受け、その輪郭が目映く光っており。
逆シルエットとなった二人だが、
頬の縁からはみ出す明るさを受けてのこと、
どちらも笑顔でいるのは見て取れて。

 「日誌は書けましたか? シチさん。」
 「うん。」

今日は部活のある日だが、道場は柔道部の優先使用日だったので、
グラウンドの縁を辿るランニングと、
コンクリが打ちっぱなしになってるポーチでの、
各種筋トレとで上がりという早じまい。
バレエ教室に通わぬ日はコーラス部にて伴奏係をこなしている久蔵も、
今日は下級生の子が担当する日だというので、
七郎次の練習が終わるの、平八と二人で待っていてくれて。

 「そういや、ヘイさん。美術部の方はいいんですか?」

幽霊部員だと自分で豪語している彼女であり。
そこはやはり芸術系の活動だから、
ぎゅうぎゅうとした束縛は無しなのか。
毎日美術室へ通わないこと、
誰ぞに何か言われているところは とんと見ないものの。
例えばどこかの科展に出すとか、
来月の月末の学園祭で展示するとかいう作品、
何か描いて提出しないといけないんじゃあないかと。
欠席者やトレーニングの内容など、部の活動記録を綴っている日誌、
パタリと閉じつつ訊いた剣道部の部長さんへ、

 「ああ、ええ。夏に20号のを2枚描きましたんで。」

ちょうど今、それを部室に飾られちゃあいますけどと、
義務は果たしているという意味からだろ、しれっと言い出す平八へ。
たちまち、居合わせたお友達二人がビックリして見せて。

 「え〜〜? それアタシ知らない。久蔵は? 知ってた?」
 「〜〜〜〜。(否、否、否)」

 20号ってどのくらい?
 60×70くらいですかね、新聞を広げたくらい。
 …………。(手で宙に四角を描いて)
 うんうん、結構大きいですよね。
 そうでしょか。小学生の図画用の画用紙2枚分くらいですよ?

あくまでも大したことじゃあないという口ぶりの平八だが、
細かい製図も好きならば、
大胆な色使いを思いついての、意外な着こなしをして見せもする彼女なのは、
仲良しな二人もまた重々承知。
下宿先でのお手伝いがありまして、なんて言い訳を口実にしているが、
さすがはお嬢様ぞろいで、皆様 芸術への造詣も深い顔触れの中、
あちこちの科展にて作品が認められる部員の多いという美術部でも、
一,二を争う指折りの実力を讃えられている ひなげしさんでもあると聞いており。

 「そっかぁ、それじゃあ今から見に行こっか。」
 「………vv(頷、頷)」

知らされてなかったお二人が、
水臭いなあとお顔を見合わせ、にっこりと示し合わせるに至って、
やっとのこと、あわわと慌て始める暢気さもまた。
実力に自覚が追いついていない、大物たる素養の現れか。

 「そんな大仰なもんじゃありませんてば。」

部室に飾られたってのは、
順番こにっていう義務みたいのが回って来てただけの話なんですし、と。
今になって尻込みするよな言い方になるひなげしさんを、
まあまあと宥めすかしつつ。
カバンへの帰り支度をてきぱき済ました白百合さんを先頭に、
こちらはカバンも手近にしての、待ってた組の相棒だった紅バラさんが、
平八の小さな背中を綺麗な手で押して、乗り気ですという意思表示するのが、
他ではまずは見られなかろう、お茶目な態度だったりし。

 教室の外、人気の少ない放課後の校舎は ますます静か。
 よほどに寂しい一角だったか、
 時折遠くに聞こえるホイッスルの音しか此処へは届かず。
 午後だとあって、少しほど傾きかけた陽光なのか。
 長く延びる廊下に等間隔に落ちる斜めの陽射しは、
 やっぱりまだまだ目映いが、
 その向こうへ透けている日陰との拮抗がちょっと寂しげ。
 水飲み場の傍らの花壇には、
 カモミールかマーガレットだと思ってた株に今頃花が咲いていて、
 それがフランス菊だと知ったのは卒業してから。
 古めかしいが重々しい、木製の階段を降りてって。
 ビル群みたいに下駄箱の居並ぶ昇降口フロアを横手に見つつ、
 出来損ないの電車ごっこみたいに、
 それぞれの肩へと手を置いたままで小走りに進み。
 短い渡り廊下を通ってお隣りの校舎へ。
 階段を登っておれば、思いがけない間合いで、
 すぐ傍なんだろ、教室でのお喋りが唐突に聞こえて来。
 他愛ないお喋りが好きなのは、年頃だものしょうがない。
 とはいえ、
 聞かれてますよと言いたくなるよな話題だったりした日には、
 ついの苦笑を誘われる……のだが。

 「今朝の〜〜テレビの占い、見ましたか?」
 「あ、ううん、見逃しちゃったの。」
 「○○さんって かに座でしたよね。」
 「ええ。」
 「今日はとってもいい運勢ですってよ。」
 「わvv」
 「じゃあそれで、
  お昼どきに三年の◇◇様からのお声かけがあったのかしら。」
 「あ、や〜ん、言ってはダメです。///////」
 「あらあら、○○さんたら◇◇様のシンパシィだったの?」

他愛ないお喋りに、や〜んという恥ずかしそうな抗議の声が重なって。
ああ一年の教室だものね、そういう話題に沸きもするかなと。
微笑ましいなぁとの苦笑も気配も押し殺し、
こそそと通り過ぎかかった3人娘だったのだけれど、

 「ラッキーパーソンは、お父様と同世代の男の人ですって。」

ぽんと、放られた付け足しの一言と。それへと続いた、

 「え〜、それって…校内に誰かおりますか?」
 「う〜んと、そうねぇ。」
 「学園長の△△様か、あ、そうそう、校医の榊せんせえとか。」

そんなお返事を聞いちゃった日にゃあ。


   ……………………………。





      ◇◇◇



 「…ゅうぞうどの、久蔵殿? 意識戻ってますか?」
 「なんだか、目の焦点が合ってませんよ? しっかり。」

ハッとして辺りを見回せば、
とうに美術部の部室である“第二美術室”に到着していた彼女らで。
何だかショックなことを聞いたもんで、
そこからの意識が飛んでたんですけれどと言いたげに。
左右から自分を覗き込んでたお友達を、紅バラさんが不安げに見回せば、

 「大丈夫だよ、
  兵庫せんせえは ゴロさんよりも勘兵衛さんよりもお若いから。」

平八が鹿爪らしくも人差し指を宙で降りつつ、
一体どうして久蔵の意識が飛んだかを、
慰めながらという器用さで、そりゃあ端的に指摘してくださるもんだから。

 「…っ。」

ああそうだ、そんな話を聞いてしまって、
何でだか 意識が揺すられるほどガーンとしちゃったのだと。
再びの一時停止状態になりつつ、
止せばいいのに記憶を確認再生している久蔵も久蔵ならば、

 「…ヘイさん、それってこっちへも手痛いったら。」

こちらはこちらで、
白百合という呼び名にあるまじきほど、しょっぱそうなお顔になって、
その口許を引きつらせている七郎次だったりもし。
何しろ、彼女らの懸想の相手、愛しい愛しい想い人らは、
どの殿方も、下手を打てば“お父様と同世代の男の人”にあたるほどの年上揃い。
滅多に明らかにしていない話だからということもあり、
それをどうこう言われた訳ではないながら。
周囲に滅多にいないようという言われようは、
何気なさ過ぎて さりげなさ過ぎてのこと、
不意を突かれたそのまま 却ってぐっさり堪えた一言となったようであり。
とはいえ、

 「だって しょうがないじゃないですか。
  好きになったお人がたまたまそんな年令だったんですもの。」

すかさず言い放った平八は、とっくにそんな割り切りも出来ていたらしく。

 「どんな我儘言っても聞いてくれるし、
  心配させるよな冒険しちゃっても、
  懲りないなぁって笑って、根気よく傍にいてくれるし。」

凭れ甲斐のあるゴロさんで嬉しいと、臆面もなく言い切るのが、
彼女には相変わらずなことながら、今は微妙に別な響きも孕んで聞こえて。

 「…そうですね。」

むしろ、だからこその頼もしさに惹かれたのかもしれませんしねと。
面映ゆげに微笑みつつ、そうと言葉を足した七郎次だったのへ。

 「………。(頷)」

やっとのこと、表情を取り戻した紅バラさんもまた、こっくりと頷く。
主治医として引き合わされた幼いころからこっちという長いこと、
兵庫はずっとずっと自分の傍にいてくれて。
前世の何にも思い出せなんだまま、
それでも憎からずと想うようになったのは、
どんどんと貫禄や頼もしさが出て来た、
その存在感に惹かれたというのも大きくて。
高校に上がってから、いろいろ思い出した折は混乱もしかかったけれど。
“今頃思い出したか馬鹿メ”と苦笑しただけで、
他はあんまり態度の変わらなかった兵庫せんせえが、
やっぱりほわほわと好きだってことには変わりなくて。

 「…あ、久蔵殿。今、兵庫せんせえのこと想ってましたね。」
 「〜〜〜〜〜。/////////」

違う違うとかぶりを振っても、そこは嘘の苦手な紅バラ様だから。
何で別な時の鉄面皮を持って来られないものか、
口許をうにむにとたわませつつ、
真っ赤っ赤になってしまったのが、愛らしいやら…気の毒なやら。

 「落差がありすぎです、久蔵殿。」
 「そうそう。
  そ〜んな可愛いお顔、そこいらで見せちゃダメですからね。」

こちらも血の巡りがよくなったか、
ちょっぴり熱くなった白い手を平八が握り。
いいね? メッだよ?と、
七郎次がお顔をのぞき込んで おでこ同士をこつんことあて合う。
いづれが春蘭秋菊か、
いやいや、白百合と紅バラとひなげしですよという、
可憐な美少女3人が。
テレピン油の匂いの染みたお部屋にて、
細い肩を抱き合い、くすすと微笑い合う清しさよ。
無表情なはずのアグリッパの石膏像さえ、
和んだお顔に見える、秋の日の午後でした。







    おまけ


そこからどういう風向きからか、
あの子たちの言ってた占いってめざましテレビのですよね、
占いといえば…と、やっぱりお話は逸れてって。

 「アタシはいいことだけ信じるかな?」
 「わたしは、悪いことがあったら、
  ああこれって朝訊いたアレかぁって納得するのに引っ張って来ますね。」
 「…………?」

  え? 久蔵殿は見てないの?
  〜〜〜〜〜。
  いちいち覚えていられない?
  ああ、そうか。そういう人もいるわなぁ。

「ちなみに、ウチのお爺様は占い信じない人です。」
「おお、さすがは工学博士。」
「……。(頷、頷)」
「…と言いますか。
 そういう会話してると耳を塞いで逃げ出しますし、
 雑誌や新聞のコラムは破って捨てちゃいますし、
 テレビだとチャンネルを変えるという徹底ぶりで……。」

 「そ、そうなんだ。」
 「〜〜〜。」

それって…むちゃくちゃ信じてませんか? お爺様。
(苦笑)
何を言いたかった平八かが判ったところで、
そんな ひなげしさん渾身の作品、
彼女の自宅から見える女学院の鐘楼と、
聖堂から見える大好きな風景という2枚の大作、
鮮やかな筆づかいなのを堪能させていただいて。
何かしら言い出しそうなお友達の視線から、
さりげなくも逃げまくってた平八が部室の一角にみつけたのが、

 「あ、占星術の本みっけ。」

さすが女子校、こういうのが必ずどっかにあるんですよねと、
とっとと めくってにんまり微笑う。
話題を変えたいのが見え見えながら、
大胆に見せて実は照れ屋さんな彼女だってのは、
とうに知ってる金髪娘らとしては。

 「えと、アタシはしし座なんですよね。」

誤魔化されてあげましょうぞと、話に乗っかるノリのよさよ。

「ほいな、しし座は、と。
 太陽がシンボルで、陽的な皇帝・女王様気質が強い情熱家。」
「何ですか、そりゃ。」
「指導者的な性格なので慕われやすいってことだそうです。」
「ありゃま。」
「……vv(頷、頷)」

大きに当たっているぞと久蔵が頷いたのへ、
こらぁと照れ隠しにしがみついておれば、

「正義感も強いがやや楽観的、
 天真爛漫ではあるが短気な一面もあり、地道が苦手な傾向もなくはない。」
「え〜、そ、そんなことは…。」
「挑発的なコスがお好きなのはそのせいかもですね。」
「ううう…。」

ありゃりゃあ、意外な地雷がありましたな。
(笑)

「久蔵殿はおとめ座ですね。
 守護星は水星で、星座は豊饒の女神と正義の女神の双方をつかさどっており、
 ロマンチストで秩序を重んじ、計画性があって周到。」

そこまでを読み上げてから、

「…なんか。
 今の久蔵殿のことだと限定するなら頷けますが、
 昔の久蔵殿とは正反対なような。」
「〜〜〜〜。」

言われた内容への自覚があるんだかないんだか、
まじまじと見つめてくる平八と睨めっこしつつ、
口許をひん曲げた久蔵であり。
そんな彼女の肩口にしがみついたままだった七郎次が、
どぉれと手を延べ、読み手を譲られたご本を読み継いで。

「どれどれ。
 善悪に敏感なあまり、清濁合わせ飲むのが苦手で、
 正邪にこだわるところから抱擁力が欠けてしまう場合もあるので注意。
 …う〜ん、むしろ抱擁力はある方ですよね。」

 いや、細腕に力こぶ作ってみようとするんじゃありませんて。
 そっちの意味じゃなくって。

 そうそう、そこまで無口なのに、
 とっぴんしゃんなわたしたちをなかなか見放さないというか。

 あ、そんな言い方でアタシまでご同輩扱いしますか、ヘイさんたら。
 だってシチさんて、案外と態度を使い分けてるしぃ

 「…、…、…。(判った判った、収まれ)」
 「ほら、この抱擁力vv」
 「う〜〜〜ん。//////」

単なる女子高生以上の蓄積が、時折お顔を覗かせるもんだから、
なかなかに奥の深い会話にもなっており、

「そういうヘイさんは かに座ですよね。えっと、守護星は月。
 カニは女帝ヘラの使いで、妻や母を表し、母性が強く逞しいまでに生活力旺盛。
 繁雑な仕事も苦もなく巧みにこなす能力はピカイチで、我を張らない感覚派。
 うあ、いいことばっかり書いてあるぞ。」
「へっへ〜んvv」

どこか自慢げに小鼻をそびやかすお嬢さんだったものの、

「ただし、防衛本能が嵩じると、排他的な闘争心が強く出るので、ご用心。」
「ありゃりゃあ。」

最後にどんとカウンターが来て、おおうと引いてしまい。
新参の人へは警戒心が強いってことでしょうかね、
客商売だってのに気をつけなきゃあと、
自分でもご本を覗き込んでいたりして。
気にしてないと言いつつ、
やっぱりそれなりに盛り上がってた彼女らだったが、

「こういう占いってさ、恋愛の相性も判るっていうよね。」
「あ…vv」
「…。/////」

そちらの話題はさらに興味がわくものか、
それぞれに椅子を引っ張って来てまでという態勢で、
該当ページを探して探して…。

「兵庫さんはおうし座か。
 えっと、守護星は知性と美意識をつかさどる金星です。
 温厚従順、堅実派ですが、それが嵩じて頑固な面もあり、私生活では我儘も発揮。
 独占欲が想いのほか強く、怒らせると鬱憤晴らしのように爆発し怖いタイプです。
 あ、おとめ座とは相性抜群です、だって。」

 「……。///////」 「おお〜〜

なかなかに無難なスタートだと、3人揃って沸いてから、

「五郎兵衛さんは、ふたご座ね。あ、かに座と相性いいんですって
 守護星は水星で、特に神話のマーキュリー、商人と弁舌をつかさどる星座です。」

「うあ、何か当たってるような…。」 「……。(頷)」

そだねぇ。何たって前世では、
お侍を辞めてからの大道芸人っぷりが ああまでハマってらしたしねぇ。

「快活で物おじせず社交的。
 臨機応変が利き、天才肌ではあるが、
 それが嵩じると移り気で気まぐれでもあるとも言えるので注意。」

「そんなぁ。」

まあまあ、
あのゴロさんが移り気だなんて、
ヘイさんに関しては論外だから安心して…と。
七郎次が言い諭し、
久蔵もまた、いい子いい子と頭を撫でてやっての………さて。

「さて、って。」 「〜〜〜〜。」
(苦笑)
「えとえっと、勘兵衛様は…てんびん座、と。」

  ……………………………。

「???」 「どうしましたか、シチさん。」

勇んで該当する星座の記述を探していたはずが、
不意に訪れたこの沈黙は何でしょうかと。
急に秋の気配が室内へと満ち満ちたような気がして、
小首を傾げたお友達からの呼びかけへ、

 「うん…しし座とあんまり相性よくなくて。」

おおお、そうかそれでかと、
不意な意気消沈ぶりへ納得し、
ひなげしさんと紅バラさんで顔を見合わせておれば、

「守護星はおうし座と同じく金星で、知性的な均整をつかさどる。
 激情に溺れず、常に冷静で、気品高く理知的。」

「ほほお。」 「〜〜〜〜。」

そこまでは褒め言葉でもあり、七郎次のお声も淀みなかったものの、

「物や人へ執着が薄く、干渉はするのもされるのも嫌い。」

 「お?」
 「?」

「冷淡とまで行かずとも、親しみを欠くと誤解されやすい…って、
 そうかだから勘兵衛様、アタシにあんまり関心がないんだ。」

 「…っ?!」
 「何でそうなりますか、シチさん。」

 思い込みの強さに、思わず体が傾いちゃいましたが、と。呆れ半分に平八がこらこらと窘める。その傍らからは、久蔵が七郎次が取り落とした雑誌を拾い上げており。細い指先が指したところを平八が読み上げての曰く、

 「但し、一旦執着してしまったものへは、
  慣れのなさも加わるか、振り回されるほど固執する傾向
(きらい)もあり。
  ほら大丈夫ですってば、シチさん。」

 「…大丈夫って解釈していいんですか、それ。」


  微妙に涙目になって訊く白百合さんだが、
  ……どっちもどっちじゃなかろうか。
(苦笑)






  〜どさくさ・どっとはらい〜  10.09.29.


  *おまけで触れました各々のお誕生日(と言いますか、星座指定)は、
   あくまでもこのお話の中でだけということで。
   (お名前にまつわる数字から、何月かを当てはめてみただけです。)
   星座への性格診断や何やも、
   出来るだけ当たり障りのないようにというものを、
   紡がせていただきましたが、
   わたし、そんな性格じゃあないと
   ご不満を感じられる方もおいででしょうね。
   どか、平にご容赦を。

  *ことの始めは、
   昨日の朝の“めざ○し占い”で、
   先の一言が1位の人へのお言葉として出ておりましてね。

    ―― ラッキーパーソンは、お父様と同世代の男の人

   勤めてる人なら上司ってこともあるだろけれど、
   学生さんならどうなるの? 担任の先生とか?と思いつつ、
   あ、でも……と後回しながら思い出したのが、
   こちらの3人娘の恋人たちだったのでありまして。

   どうなんでしょうか、実際の話。(うくく…)
   兵庫せんせえは辛うじて年下かもですが、
   あとの二人は それぞれのお嬢の父上より年上かもしんないぞ?
(大笑)


  *ちなみに、島田一族のお話のシチさんは うお座かなと思いました。
   情緒深くて限りない抱擁力を持ち、
   繊細なロマンチストで こっそりと甘えたがりでもあるそうで。
   思いやりの塊で献身的なため、
   そこへ付け込まれて騙されやすいので要注意、だそうです。

   そして宗主・勘兵衛様は、
   知識欲が強く行動派、前進的ではあるが、
   気をつけないと 知らずに他者を傷つけていることもある
   ……という射手座とか。(う〜ん…)

   しし座の女子高生シチちゃんには
   こちらの勘兵衛様のほうが相性ばっちりなのですが、
   そんなお二人で邁進されては周囲が堪ったもんじゃない。
(笑)
   なので、
   いっそ微妙に相性がズレてる方が、
   意識しないと補い合えない間柄のじれったさが味わえて
   良いかも知れませんぜ? ということでvv

ご感想は こちらへvv めーるふぉーむvv

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